動物病院用語辞典

動物病院で使われる専門用語を解説していきます。
分かりやすさを優先するため口語的な解説や例えを用いているため
より正確な解説に関しては専門書を参照して下さい。

 ISFM

Internal Society of Feline Medicineの略で
日本語では国際猫医学会と訳されます。
猫に多い疾患やお薬の安全な使い方などの指針を発表しています。
また近年、「Cat Friendly Clinic」(猫に優しい病院)の
認定なども行っています。

ISFMロゴ ISFM 猫に優しい病院

   ▲ISFMのロゴと猫に優しい病院の
    認定証(マーク)です。     

 IRIS

International Real Interest Societyの略で
日本語では国際獣医腎臓病研究会と訳されます。
CKD(慢性腎臓病)のステージ分類や治療指針などを
発表しています。

IRISロゴ

   ▲IRISのロゴです。
    iの点が腎臓のシルエットになっています。     

 アシドーシス

体に流れる血液は基本的にほぼ中性(pH7.4)に保たれています。
アシドーシスとはこの血液が酸性側(pH7.35以下)に傾いてしまった
状態です。呼吸性・代謝性など原因によって分類され、
糖尿病の場合、ケトン体と呼ばれる酸性の物質が体に溜まることに
よってケトアシドーシスが発生します。

症状としては嘔吐から意識障害・昏睡などが認められ
速やかな治療が求められます。

 アルカローシス

アシドーシスと真逆の症状で血液がアルカリ性になった状態です。
アシドーシスよりも発生割合としては低い印象です。
激しい嘔吐で胃酸の喪失などから発生します。
(嘔吐により胃液中の塩酸(HCl)が喪失→胃酸を補うため
血液中からクロール(Cl)を胃液中へ→血液がアルカリ性に)

重度の場合、意識障害・昏睡を引き起こし速やかな処置が必要です。

 医原性

医療行為に伴う反応のこと。
医原性疾患とした場合、医療行為に伴い発生した疾患を指します。

例)医原性クッシング症候群
ステロイド(副腎皮質ホルモン)を長期使用した際に、
副腎皮質機能亢進症が引き起こされたもの

医療過誤とニュアンスとして近いのですが、
獣医療では少し難しいところがあります。

例えば、激しい痒みを伴う皮膚疾患ではステロイドによって
痒みを抑える治療が行われます。
ステロイドは比較的効果が高く、他の薬剤では効果が得られない場合でも
ステロイドでは症状が緩和されるケースが多いです。

その為、副作用のリスクを飼い主様が受け入れて使用継続を
望む場合も少なくありません。
その為、人で使われる医原性とニュアンスが異なる場合があります。

 悪心(おしん)

症状の一つで胸のむかつき・吐き気などを表します。
犬や猫ではよだれを垂らしたり、ペロペロと何度も
舌を出し、落ち着きなく歩き回ったりします。
病気だけでなく、薬の副作用としてもあり得る症状です。

 基礎疾患

ある病気や症状の原因なる疾患のこと。

例)FIV(猫エイズ)は免疫力の低下によって、
様々な感染症を引き起こす基礎疾患となります。
動物病院の診察においては、見かけの疾患や症状だけでなく
隠れた基礎疾患を見抜くことが重要です。
背景疾患などと同義です。

 菌血症

本来無菌であるはずの血液中に細菌が認められる状態で
敗血症とは区別して考えられます。
(菌血症から敗血症に至るケースはあります。)
傷口などから細菌感染を引き起こした場合が代表的で、
抗生剤など投与が行われます。

 筋肉注射(IM)

カルテにIMと記載された場合、筋肉注射を指します。
効果発現の速さとしては、血管内投与→筋肉内投与→皮下投与
の順に早いです。(どの投与経路でも投与できる場合)
また筋肉注射の特徴として皮下投与などよりも
注射の痛みが大きいです。

 後天性疾患

先天性疾患と対になる用語で、生まれた直後では異常がなく
後に発症した疾患を指します。
動物病院の疾患の大半は後天性疾患に分類されます。

 
 

 殺菌作用

 

 抗生剤は殺菌作用と静菌作用の2タイプに分かれます。
 殺菌作用は細菌を死滅させる働きを指します。
 体の免疫に頼らず、薬自体の作用で菌を排除できます。
 

 

 三臓器炎

 

 猫においてよく認められ
 膵炎・胆管炎・十二指腸炎が併発した状態です。
 解剖学的に猫は膵管・胆管・十二指腸の位置が近く
 炎症が周囲の臓器を巻き込んで広がってしまいます。
 

 

 自然排卵動物

 

 犬や人間など多くの動物が該当します。
 交尾の有無にかかわらず、一定の周期で排卵を起こす動物を指します。
 排卵に合わせて発情など交尾を受け入れる体制を雌が示すことで
 妊娠確立を高めます。

 

 人獣共通感染症

ヒトとそれ以外の脊椎動物の両方に感染または寄生する
病原体により生じる感染症のこと。
脊椎動物であることが条件であるため、
昆虫やダニ類などを介して感染するものは含まれません。
代表的な疾患には、狂犬病・エキノコックス・猫ひっかき病などが
挙げられます。

 静菌作用

抗生剤は殺菌作用と静菌作用の2タイプに分かれます。
静菌作用とは細菌の増殖を抑える働きを指します。
静菌作用の抗生剤では、直接細菌を死滅させる働きはなく
体自身の免疫力によって細菌を排除します。

 先天性疾患

生まれつきの病気・異常であり、遺伝的な素因が背景にある場合が多いです。
(必ずしも先天性疾患=遺伝性疾患ではありません) 奇形などによる疾患なども、先天性疾患に区分されます。
代表的な疾患としては心室中隔欠損・動脈管開存症・水頭症などが
挙げられます。

 

 対症療法

ある病気によって発生する症状に対して行う治療のこと。
例えば、犬伝染性気管支炎に対し、咳止めを使うことは対症療法です。
原因そのものに対しての治療(根治療法)ではない為、
「姑息的治療」や「補助療法」と重複します。

 チアノーゼ

皮膚や粘膜が青紫色に見える状態を指します。
血液中の酸素濃度が低下した状態を示す指標として重要です。
血液中のヘモグロビンは酸素と結合している状態だと
鮮やか赤色になるのですが、酸素が減少するとどす黒く
青味がかって見えるためこのような変化が起ります。

チアノーゼ チアノーゼ

   ▲チアノーゼの画像
    犬では正常でもチアノーゼが見られる場合が
    あります。(生理的なチアノーゼ)     


 DIC(ディー・アイ・シー)

播種性血管内凝固症候群の略です。
血液内には凝固系と線溶系と呼ばれる二つの因子があり、
凝固系:出血時に活性化し、止血に関与
線溶系:血栓を溶かして分解する
この2つの因子がバランスよく働くことで、怪我をしても
血を止めることができ、再び血流を再開することができます。

DICとは凝固系が異常に亢進(活性化)し、血管中で凝固した状態を指します。
よくテレビや小説などではDICは血が止まらなくなる様子が描かれているのですが、
本質は凝固系が活性化(過剰に血栓を作る)したことに起因します。
過剰に凝固系が亢進してしまうと、凝固因子を使い果たしてしまい
枯渇した結果、血が止まらなくなってしまいます。

腫瘍・敗血症・熱中症などの進行に伴い併発し
発生した場合致命的なケースが多いです。

 デブリードマン

感染や壊死した組織を除去することを指します。
感染・壊死術創は傷の再生・回復を妨げてしまう為
清潔な術創にすることで治癒を早める効果があります。

 特発性疾患

原因が明確に特定できない疾患を指します。
これは獣医師が分からないのではなく、現時点の獣医学・医学で
病気の発生機序が特定できていないものを指しています。
「本態性」と同義です。

 トレッドミル

正確にはルームランナーやランニングマシンのことを指しますが
獣医療の場合、リハビリで用いるウォータートレッドミルを
示すことが多いです。
水中で体重の負荷を減らした状態から、
リハビリを行うことができる利点があります。

トレッドミル

   ▲トレッドミルの画像
    リハビリには獣医師・看護師など
    専門的な知識のある担当者によって実施します。     

 肉腫

筋肉や骨、軟骨・脂肪・血管など非上皮系細胞由来の細胞に
発生する悪性腫瘍を指します。
臨床的に癌も肉腫も悪性腫瘍に含まれるのですが、
骨にできた悪性腫瘍は「骨肉腫」・血管由来の悪性腫瘍は「血管肉腫」
といった風に悪性腫瘍の呼び方のルールになります。

肺や乳腺などは上皮系細胞であるため「肺癌」「乳癌」など
という風に呼び方が変わります。

 

 尿毒症

 

 腎機能の低下によって老廃物や毒素が体内に蓄積し
 それによって引き起こされる症状を指します。
 腎臓の残存機能が10%未満にまで低下した状態であると
 考えられており一般に腎不全の末期を尿毒症期と呼びます。
 神経症状・昏睡などを引き起こし、最終的には死に至ります。