尿路結石(尿石症)

尿石症とは腎臓から尿道までの尿の通り道に結石が認められる疾患であり、
その結石が生じた部位に応じた症状が認められます。
結石の発生には食生活・ストレス・基礎疾患の関与が考えられており
自宅での予防や生活管理が重要な疾患です。
治療は食餌療法から外科手術まで、幅広く症例ごとによって異なるため
正しい理解が必要です。

尿路結石の治療

治療では結石閉塞による緊急症例への治療と
慢性症例への治療で分けて説明していきます。

緊急対応の必要な尿道閉塞へは速やかに、閉塞の解除を行う必要があります。
まずは緊急措置として尿道口からカテーテルを挿入し、結石を膀胱内まで
押し戻す処置を行います。
これによって排尿することができるため、取り急ぎ膀胱破裂を
回避することができます。しかしながら、この処置はあくまで緊急対応で
根本的な解決へはつながりません。
しばらくするとまた閉塞をひきおこし救急疾患として来院することも多く、
根本的な解決には手術による結石の除去や食餌療法による
結石の溶解が必要になります。

トムキャットカテーテル 栄養カテーテル
▲尿路閉塞の解除に用いられるカテーテルです。
 尿道に結石が引っかかっており、痛みを伴う為
 キシロカインゼリー(局所麻酔)を使いながら処置します。  


またどうしてもカテーテルでは結石を押し戻せない場合、注射器で
膀胱内の尿を吸い出し、「会陰尿路造瘻術」を行います。
会陰尿路造瘻術:おしっこを出す通り道を広げ、狭い部分を切除する手術です。
ペニスの切除を行い肛門の下側に尿道の開口部を移動させます。
その他超音波にて結石を砕いて細かくし、閉塞を解除する方法もあるのですが
設備がどの病院にもあるわけではないので注意が必要です。

尿管に結石が詰まった際には開腹し、結石の除去を行ったり、尿管バイパスシステム (SUBシステム)を使いおしっこの通り道を確保できるようにします。
ただし尿管結石の手術にも特殊な器具が必要なので
こちらも対応できる病院への受診が必要です。


慢性症例への治療ですが、内科療法と外科療法に分けて考えられます。
まず外科療法ですが膀胱切開を行い結石を直接除去する手術が一般的です。
シュウ酸カルシウム結石などは食事では溶解しないため根本的な治療には
外科手術が必要となります。
その後結石が再発しないよう予防管理を行うことがが非常に重要です。

膀胱切開
▲膀胱切開による結石摘出  
 wikipediaより

内科療法では結石ごとに解説します。

ストルバイト:別名:リン酸マグネシウムアンモニウム結石であり
        石の構成成分としてリン・マグネシウムが含まれています。
        またストルバイトは尿がアルカリ性の場合に結晶化しやすく
        反対に尿が酸性になると溶解する特性を持つ。
        ストルバイト結石に膀胱の細菌感染が併発しているケースが
        多いのは、ウレアーゼ産生菌という自分の周囲の環境をアルカリ性
        に変える細菌が感染しているためです。

        その為治療としては、リン・マグネシウム・タンパク(尿のpHや
        アンモニアの材料)を制限し尿のpHが酸性になるような食事と、
        抗生剤による細菌感染による膀胱炎の治療が行われます。
        現在、動物病院で買える処方食では喉が渇く成分を配合し
        飲水量を増やすようなものもあります。
        (お水をいっぱい飲んで、どんどんおしっこを出すことで結晶が
         できにくくする働きがあります。)

シュウ酸カルシウム:効果的な内科療法はなく
              外科療法が選択肢となります。
              ただし結石を除去した後は再発防止のための
              食餌管理(内科管理)を行います。
              結石の基となるカルシウムやタンパク質を制限し
              飲水量を高めるよう調節します。               

尿酸塩:尿酸(プリン体)の過剰によって生じる結石で尿のpH が
      酸性の際に形成されやすく食餌管理によって溶解させることが可能です。
      治療としてはタンパク質(プリン体)の制限や尿酸合成阻害薬、
      細菌感染治療が行ない尿のpHをアルカリ性に調節します。
      飲水量を増やすことも推奨されます。

シスチン:シスチンはタンパク質の一種であるため
       タンパク質制限およびpHをアルカリ性に保つよう調節を行う。
       また動物における効果は未知数ではあるが人で用いられるシスチンの
       排泄を抑える薬などが併用される場合もあります。

シリカ:有効な内科療法はなく外科療法が選択肢となります。
      シリカは植物由来の食品に多く含まれるため
      食餌における植物由来のものを減らしリスクの低下を図ります。
 

尿路結石のpoint

尿路結石の最大のポイントは「再発」です。
飼い主様とミスコミュニケーションによる問題が生じないよう
特に注意して説明を行います。

その理由ですが、尿路結石は外科手術で除去したとしても
容易に再発する可能性があるためです。
難治性の膀胱炎では膀胱内で出血や粘膜の脱落が起き、その剥がれた細胞が
核となって結晶が作られやすくなります。
(超音波で膀胱を見るとキラキラと星空のように見えます)
食餌療法を行い、抗生剤を用いて予防を行ったとしても必ず再発を防げるとは限らず、
何度も繰り返す可能性もあります。
また結石の発生原因に個体の特性が影響していることも考えられるため
基本的に一度結石が認められた場合、生涯にわたって食餌管理などを
行っていくことが望ましいと考えられます。

膀胱炎
▲膀胱炎の超音波画像  
 膀胱内がキラキラとしているのは、出血や結晶により
 超音波が乱反射しているため


次に食餌療法ですが、ストルバイトなどの溶解できる結石において
処方食で溶解中に尿路閉塞を引き起こすケースがあります。
尿管・尿道とも細い管であるため、結石が大きい場合はそもそも
管に入り込まなかったのに、なまじ食餌療法で結石が小さくなること
によって詰まってしまう可能性もあります。
(放っておけば、新たな結石ができて詰まる可能性もあるので
リスクは変わらないとも取れますが…)
その為、結石が小さくなっている(よくなっている)ときにも
油断しないようにと飼い主様へはご説明しています。

また、尿路結石用の処方食は総じて太りやすい傾向があるようです。
現在はその辺に配慮した低カロリーのものも登場し、かなり種類が豊富なので
獣医師へ相談してみて下さい。

     ▲尿石症にて用いられるフード
      ヒルズやロイヤルカナンといったメーカーが代表的です。
      尿石症用のご飯は味気ない部分もあるためか、
      あまり食べてくれない子も少なくありません。
      種類が豊富にありますので、まずは続けて食べてくれるものを
      お勧めしています。