乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は小動物臨床にて手術が最も多く行われている腫瘍です。
雌犬で多く認められ、避妊の発生率に関与していることが知られています。
悪性・良性の双方があり、予後が大きく変わるため注意が必要です。

犬の乳腺腫瘍

雌犬で最も発生率の高い腫瘍です。
乳腺部にしこりができ、飼い主様が不安に感じ来院するケースが多いです。
獣医師の間では「50%ルール」という言葉が知られており、
50%の割合で悪性腫瘍(50%で良性)である言われています。
(論文によって差はあるのですが、多くの先生より感覚的に支持されているので
飼い主様へのインフォームドコンセントの際に説明としてよく使われています。)
さらに、この悪性腫瘍の50%(50%のうちの50%=25%の割合)が転移を
引き起こしており、予後不良が予測されます。

猫の乳腺腫瘍

猫の腫瘍発生率の第3位で、雌猫の腫瘍の17%を占めています。
犬に比べ発生率は低いものの、悪性腫瘍の割合は90%と言われ、
50%以上の症例で転移が認められるなど犬と比較し危険性の高い疾患です。
来院時点で遠隔転移が認められることが多く、手術不適応の場合も多い疾患です。

症状
一般的にしこり(腫瘍)の増大スピードは良性ほど緩やかで
悪性度が高いほど急速であることが多いです。

また腫瘍は自壊による出血が認められる場合があります。
(こちらも悪性度が高いほど自壊は多いと言われています)

自壊について簡単に説明しますと腫瘍は正常な組織と異なり、
きちんとした設計図に基づいて作られた組織ではありません。
場当たり的に増殖を繰り返すため、血管新生(血管を作ること)が
追い付かずに栄養・酸素不足に陥ってしまいます。
そうすると腫瘍細胞は壊死を引き起こします。これが自壊です。
また正常な組織と比較し,腫瘍組織は脆いこと場合も多いため
少しぶつけただけで出血したりしてしまいます。
(自らの重みに耐えきれずに組織が壊れてしまったりします。)
自壊に伴い出血や膿の排出などが起り、QOL(生活の質)を大きく
下げてしまう
要因となってしまいます。
良性の場合、しこりの物理的な問題以外の影響は認められないことが多いですが、
悪性の場合、肺転移などによって呼吸困難などを引き起こし死に至ります。

腫瘍の大きさが3㎝を超える場合、予後が悪くなることが知られており、
犬では2年間の無病生存率が23%、再発率は85%です。
猫ではさらに悪く中央生存期間が6か月と報告されています。