犬伝染性気管支炎(ケンネルコフ)

犬伝染性気管支炎(ケンネルコフ)とはウイルスや細菌の感染により、
風邪のような症状が認められる呼吸器感染症です。
ケンネル(犬舎)のコフ(咳)という名前の由来の通り、
繁殖用の犬舎などで蔓延する感染力の高い疾患です。
免疫力の低い子犬や老犬で特に注意が必要です。

手術難易度
ケンネルコフの概要

犬伝染性気管支炎(ケンネルコフ)は犬の風邪として
飼い主様に説明されます。

原因はウイルスから細菌まで幅広く、咳を特徴とする呼吸器病の
総称がケンネルコフとして扱われるのですが、最も多い病原体としては
犬パラインフルエンザウイルスやアデノウイルス2型などが多いとされています。

子犬 ラブラドールダックス 子犬
   ▲犬伝染性気管支炎では
    子犬での感染が非常に多く
    重症化しやすいので注意が必要です。     


ワクチンの済んでいない子犬で空気の乾燥する冬場で特に多い傾向にあります。
感染経路としては咳やくしゃみによる飛沫感染をはじめ、人や食器などを
介しても伝播する可能性があります。
(人は感染・発症することなく、あくまで媒介するだけです)
単独感染とは限らず、複数のウイルス・細菌が複合して感染するケースもあります。
飼育状況や環境・衛生状態が感染に非常に大きな影響を与える疾患と言えます。

ただし多頭飼いでなくとも散歩やドックラン、感染の機会は無数にあるため
完全に予防をすることは難しいです。
主たる原因の一つであるパラインフルエンザウイルスに対するワクチン
の使用によってリスクを下げることができます。

症状

主たる症状としてまず何より「」が挙げられます。
是非、飼い主様に注意して頂き来たいのが、犬の咳の様子です。

「グッ グッ」や「ガハッ」とえづいているようにも見えるため
飼い主様によっては喉に何か詰まっていると勘違いされたりして
病院に来るケースがあります。

   ▲ケンネルコフと診断された犬
    咳の症状が認められており、喉の異物や
    吐き気と間違えないように注意が必要です。     


一般にパラインフルエンザなどの単独感染では重篤化することは少なく
症状も咳のみで1~2週間程度で自然回復する例も少なくありません。
ただし重篤化症例では、発熱・食欲低下・鼻汁・目ヤニなどの症状が現れ、
複数のウイルスや細菌による混合感染の場合、さらに肺炎などを引き起こし
呼吸困難により死亡することもあります。

またケンネルコフに感染することで体力を消耗し、免役低下によって
別の感染症(パルボウイルスやジステンパーなど)を併発する恐れもあります。

 
 ケンネルコフの診断

診断は一般的にワクチンの接種歴・年齢・聴診や身体検査所見,
別の病気の除外を行い総合して判断します。

原因は一つではない為、検査ではっきりと分かるわけではなく
あくまで「ケンネルコフの可能性が最も疑わしい」ので治療を行う
といったレベルです。(人の風邪と同様です)

咳を引き起こす病気はとても多く、子犬でワクチン未接種・
多頭飼いなどケンネルコフの典型的な場合は診断しやすいのですが、
成犬などの非典型例では鑑別疾患(ほかに可能性を疑うべき疾患)が
多くわかりづらい場合もあります。

そのような場合、血液検査・レントゲン・超音波検査などを行い
病気を絞り込んでいく必要があります。

ケンネルコフの治療

治療としては抗生剤などを用い二次感染をしっかりと防ぎつつ
体がウイルスを排出するのを待つのが一般的です。
(ウイルスが主たる原因の場合)  

抗ウイルス効果を期待してインターフェロン製剤が使用されることもあります。
咳を頻繁に行う場合、鎮咳薬を用いることで咳を抑えます。
咳はウイルスや細菌を排出するために体の反応として起きるため
軽度の場合などは抑えないこともあります。
(体力の消耗や喉の炎症を引き起こす重度の咳に使用することが多いです)

インターフェロンネブライザー
   ▲左:インターフェロン製剤
    右:ネブライザー
    お薬を溶かし込むことで動物を興奮させずに
    投薬できるメリットもあります。     

さらに補助療法として気管支拡張薬を使用する場合もあります。
気管の粘膜上には線毛と呼ばれる細かいヒダがあり、ウイルスや
細菌などの異物を外部に痰として排出する機能が備わっています。
気管支拡張薬はこの線毛の運動を改善し、異物の排出を助けます。

また上記の治療は飲み薬だけでなく
ネブライゼーション(噴霧吸入療法)として使用されることもあります。
ネブライゼーションとは薬剤を溶かし込んだ水をミスト(霧)状にして
吸入させることで直接気管支にお薬を作用させることを目的とした治療法です。
抗生剤を加えたり去痰剤(痰を分解し粘膜の滑りをよくする薬)が
使用されます。

ケンネルコフ 獣医師の本音


この病気のポイントは「」です。

実は「咳」を症状として認められる病気は非常に多く
気管や肺の疾患だけでなく心臓病・感染症でも咳は認められます。
ケンネルコフでは咳以外の症状も特徴的なものが無く、疾患の絞り込みが
難しい場合も少なくありません。

その為、鑑別疾患の除外が非常に重要であり
ある意味獣医師の経験が重要な疾患ともいえます。

多くの場合、対症療法をきちんと行うことで重篤化する
ことなく改善することがほとんどですが、飼育し始めの子犬では
特に注意が必要です。

ワクチンを使用することで予防は可能なのですが、
それまでの期間は念のためパピークラスドックランを控えるよう
指導を行っている病院様も多いです。