去勢手術 精巣摘出手術

ここでは動物病院で行われている去勢手術について解説を行っていきます。
精巣を摘出することで繁殖・妊娠を防ぐことが可能となります。
避妊手術と並び動物病院で行われている手術
で一般的にCAST(キャスト)と呼ばれています。

手術に時期に関する考え方は基本的に避妊手術に準じます。
一般的に発育具合を鑑みて生後6~12か月で行うケースが多いです。

(大型犬ほど発育に時間がかかるため遅めに手術を行うことが多いです)

また合わせて手術内容に関してもこちらの項目で触れていきます。手術自体は
猫であれば3~5分、犬であれば10~15分程度で終了します。むしろ麻酔の導入・覚醒
のほうが時間がかかる上に慎重に行う必要があります。一般的に麻酔の導入時には
留置針を取った(血管を確保した)うえで静脈投与にて麻酔の前投与を行います。
血管を事前に確保することで、問題が生じた際に速やかに対処することが可能と
なります。しかしながら野良猫や暴れてしまう猫などでは血管を確保すること自体が
難しくなります。
(暴れると留置針が入らない・入っても外れてしまう、暴れて爪が折れてしまう
猫が怪我してしまう恐れがある…などが挙げられます)

その為、そういった症例では吸入麻酔のみで導入を行います。
具体的にはケージごと大きなビニールで包み、そのビニールの中に麻酔ガスを送り込む
という方法です。猫に十分麻酔が効いて大人しくなってから猫をケージから出し手術
を行います。この方法は非常によく用いられるのですが、どうしても血管を確保して
いない分リスクは高くなってしまいます。

また、もう一点 去勢手術に関連の深い内容として気管挿管の有無についても
解説します。気管挿管とは喉の奥にある気管にチューブを挿入することで空気の
通り道を確保する為の方法です。麻酔の安全性を高めるためほとんどの手術で
行われるのですが、前述の通り猫の去勢は数分で終わるため行わない病院様も
いらっしゃいます。
理由としては猫は気管が狭く(犬と比べ小さく)チューブの刺激により
手術後に咳が出てしまうケースが比較的多いためです。気管挿管の有無と
その是非に関してはここでは避けますが,同じ手術でも違いがあることをお伝えする
ことは飼い主様にとって有益であると思いここに記載しました。

獣医師の本音

去勢手術の手術内容は陰嚢内にある精巣を摘出するというもので
おそらく小動物臨床に進んだ獣医師が最も最初に行う手術だと思われます。

(筆者も初めて行った手術は去勢手術でした。)犬よりも猫の去勢の方が血管が細く
出血のリスクも少ないため猫の去勢→犬の去勢→猫の避妊→犬の避妊
という流れで手術を経験していくというのが一般的ではないかと思います。

手術に関して「若手の先生では不安、院長先生に手術を行ってほしい」という
飼い主様のお声を頂くのですが一般にいきなりすべての手術を任せることはありません。
これは私が手術を教わった流れなのですが、まず手術の見学しつつ必要な器具を
院長先生に渡す、院長先生が結紮した糸を切るなどのサポートを行います。
その後、②手術中の一部の手技を実際に行います。(糸結び、切開、剥離など)
その後院長先生が十分に手術が行えると判断した場合、院長先生の
監督下での執刀という形になります。
何かあった場合などすぐに院長先生フォローできるようにそばにいます。
このように手術に関しては十分な体制を採っている病院様がほとんどです。

去勢手術や避妊手術は確かに手技が確立されており若手の獣医師が手術経験
を得るのにふさわしい手術なのですが、院長先生(経営者)の考え方は少し違います。
ある院長先生とお話ししていたところ避妊・去勢のほうが腫瘍や子宮蓄膿症
よりも気を使うとおっしゃられていました。
その理由として避妊・去勢手術は若齢かつ健康な症例が対象となるため
成功するのが当たり前と飼い主様に思われている点が挙げられます。
実際99%以上問題なく手術が行われるのですが、まれに麻酔が安定しなかったり
隠れた基礎疾患によって異常が生じるケースがあります。
(手術手技が問題になることは少なく、麻酔処置に耐えれないことが問題になります。)
あまりリスクの話をして飼い主様を不安がらせるのもよくないのですが
麻酔を行う以上、リスクが発生することに関して飼い主様のご理解が必要になります。

また避妊・去勢に関して獣医師の間でよく話題となるのが費用に関してです。 一般的に飼い主様は動物病院の価格帯(診察費が高いか安いか)を判断するのに
避妊・去勢手術、ワクチン、ノミダニ予防薬などが参考に
なっていると言われています。
その為、各病院ではその辺を意識した価格設定を行っているケースが多いです。
多くの場合、飼い主様はより安い病院へ手術に行かれるのですが、
ここに少し懸念点があります。

避妊・去勢手術の手技自体に大きく差はないのですが、使用する器具や薬には
差が
あります。例えば縫合糸なのですが、ものによって値段が大きく異なりますし
麻酔の前投与薬(鎮静剤など麻酔をフォローするようなものとして考えてください)
や鎮痛薬の使用の有無などによっても、値段に差が出るのは当然です。
留置針(血管の確保)を行っているかによっても費用は変わります。
野良猫への支援として安く避妊手術を行っている病院様では説明・同意の上
安い縫合糸や薬を使用しているケースもあります。
また避妊手術で一泊入院を行う病院もあれば日帰りの病院もあります。
さらに腹腔鏡を用いた避妊手術を行っている病院もあります。
避妊・去勢手術はその子にとって一生に一回の手術であるとこは間違いありません。
その為、価格だけでなく総合的に見た病院選びを行われることをお勧めいたします。