ファンコーニ症候群

ファンコーニ症候群とは腎臓の機能不全により
ブドウ糖・アミノ酸・尿酸・リン・カリウムなど
生体内に必要な物質が尿中に漏れ出してしまう病気です。

これによって低リン血症・低カリウム血症をはじめ
様々な変調を引き起こします。

手術難易度 リスク
ファンコーニ症候群の概要

 腎臓は血液中の老廃物を濾し取り、
 尿として体外に排泄する役割を担っています。

ただし血液中には体にとって必要な成分も多く必要なものは
体に残し老廃物だけを尿にして排泄する必要があります。

腎臓には近位尿細管という組織が存在しており、
この組織はいったん尿に溶け出したナトリウムやリン・カリウムなど
必要な成分を体に再吸収する働きを持っています。

ファンコーニ症候群とはこの近位尿細管に異常をきたした結果
体にとって必要な成分を再吸収できなくなってしまう病気です。
体にとって必要な物質が尿中に漏れ出してしまうことで
様々な症状が現れます。

バセンジーバセンジー2
   ▲バセンジーは好発犬種として知られ
    遺伝性疾患の一つです。
    約10%がファンコーニ遺伝子を持っています。     

先天性と後天性があり、先天性ではバセンジー
シェットランド・シープドッグ、シュナウザー、ノルウェジアン・
エルクハウンドなどで遺伝性に発症することが報告されています。
特にバセンジーでは10%程度がファンコーニ遺伝子を持っており
発症が多いことが分かっています。

後天性では中毒・自己免疫疾患などによる腎臓の障害、
猫では甲状腺機能亢進症からの続発が報告されています。

症状

 近位尿細管は水分の再吸収も行っているため、
 ファンコーニ症候群になると水分も再吸収できず
 多飲・多尿が認められます。

重度の場合、脱水が認められることもあります。

また、血液中の成分が尿に漏れ出してしまう為
低リン血症・低カリウム血症などを引き起こします。
またミネラルなどを失い、体のイオンバランスが崩れることで
アシドーシス(体は通常ほぼ中性に保たれているのですが、
これが酸性になってしまった状態)を引き起こします。

またタンパク質や糖分も再吸収できないため
タンパク尿・尿糖が認められます。
重度かつ慢性の場合、糖分・タンパク質の喪失により
体重の減少・削痩が症状として現れます。

 
 ファンコーニ症候群の診断

 ファンコーニ症候群の診断には

 ・犬種・臨床症状の確認

 ・血液中の電解質測定(ナトリウム・リン・カリウムなど)
  酸‐塩基平衡の測定

 ・高血糖を伴わない尿糖(糖尿病との鑑別)

 ・尿中へのタンパク質・糖・ミネラルの漏出の確認

を組み合わせて行います。

ファンコーニ症候群は決して頻発する疾患ではないため
好発犬種のバセンジーではない場合など、診断にはステップが必要となります。
健康診断で尿糖やタンパク尿が見つかった場合、糖尿病や別の腎臓病を
疑ったり、ホルモン疾患を疑って検査を行い可能性が高い順に除外を行い
最後にファンコーニ症候群と診断を行う場合もあります。

また必ずしも検査所見が典型例とは限らないことがあり、
より診断を難しくする要因となります。
その為、診断は比較的難しい疾患といえるかもしれません。

ファンコーニ症候群の治療

  後天性疾患で原因が特定できる場合、
  原疾患の治療を行います。

後天性疾患の場合、原因が解除されれば治療から離脱できる
可能性も考えられます。

先天性疾患の場合、基本的には対症療法を行い、出来る限り
血液数値を正常に近づけるよう管理を行っていきます。

具体的には

  ・低カリウム血症→カリウムの補充

  ・低リン血症→リンの補充

というように、尿中に失われるミネラルを補うように投与を行います。

またアシドーシスが認められる症例に対しては
重炭酸ナトリウムの投与を行い体の中のpHを中性に近づけます。
(重炭酸ナトリウムは化学式HCO3の物質で、アルカリ性なので
アシドーシスに対して使用されます。)
ただし、投与量の調節が難しい場合もあり、投与量の調節は血液ガス測定により
決定する必要があります。
血液ガス測定装置はどの病院にあるわけではないため、
定期的に装置のある病院への受診が望ましいです。

さらに治療の一環として食餌管理が行われます。
一般的な腎臓病ではタンパク質の制限を行うのですが、ファンコーニ症候群の
場合、タンパク質の漏出による筋肉量の低下が起きることが考えられるため
良質なタンパク質の投与が推奨されます。

人のファンコーニ症候群の治療から、カルニチン(脂肪を燃焼しエネルギーを
生み出す働きを持ち、低カルニチン血症になると筋肉量の低下が起る)
の投与が行われる場合もあります。

上記の治療によって良好に管理できた場合、
正常犬と同等の近い生存期間が得られたと報告されています。
ただし、他の腎疾患と併発した場合など管理が難しい
ケースも少なくありません。