甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は高齢猫において多く認められる疾患です。
早期の発見・適切な治療を行うことで長期の管理も可能な疾患です。
反面、病気の発見が遅れたり十分な管理ができない場合
寿命が短縮してしまう恐れのある疾患でもあります。

甲状腺機能亢進症とはその名の通り、甲状腺の機能が活発
なりすぎてしまい,その結果として発生する病気です。
甲状腺ホルモンの分泌が過剰となり、様々な臨床症状が現れます。

猫の甲状腺

▲猫の甲状腺 Wikipediaより


甲状腺の機能が過剰になってしまう理由として、大多数が良性の腺種性過形成
あると言われています。これは正常な甲状腺組織が増殖したもので、ホルモン分泌
は行われますが腫瘍細胞(癌)ではありません。
甲状腺癌に起因するものもあるのですが、全体としてはわずかです。

猫と比較し、犬の甲状腺機能亢進症の発生率は低く、甲状腺癌に起因するもの
が主であると言われています。(その分、予後も悪いケースが多い)
しかし甲状腺癌の中でもホルモン分泌能(ホルモンが分泌できる能力のこと)を持つのは
10%程度と言われ、犬の甲状腺機能を臨床現場で診ることは多くはありません。

甲状腺ホルモンはもともと運動代謝に関係しています。

各種ホルモンは生体内に必要不可欠なものですが、そのバランスがなにより重要です。
甲状腺ホルモンが過剰となりすぎると、多食・体重の減少・活動性の増加
(攻撃性の増加)被毛の質の変化などが現れます。
飼い主様からの稟告(症状の聴取)で
「暴れるほど元気がよくご飯を食べているのに体重が落ちていく」
というのは、この病気の特徴的な症状になります。
その為、高齢猫であるにもかかわらず、過剰に元気がよい場合も注意が必要です。
上記の症状に加え、嘔吐・下痢など一般的な消化器症状が認められることもあります。

次にホルモン疾患の注意点として、甲状腺ホルモンが過剰となることで、
いくつかの病気を誘発する可能性があります。
代表的なものでは

 ・肥大型心筋症
 ・全身性高血圧およびそれに起因する網膜剥離・網膜出血など

が挙げられます。
これらの病気が誘発されることによって、病気に応じた症状が認められます。

診断  

 甲状腺機能亢進症の診断には臨床症状の確認、甲状腺ホルモン
 (T4・FT4)の測定が一般的に行われます。

 また甲状腺の腫脹により、健康診断時などに病気を見つける場合もあります。

猫 甲状腺 腫れ

▲猫の甲状腺の腫脹 Wikipediaより


血液検査の信頼性は高いのですが、甲状腺機能亢進症診断の問題点として
「飼い主様が病気と気づかない」ことが挙げられます。
元気もよいし食欲もある、体重の減少は年齢の増加によるものだと飼い主様が判断し、
病態が進行した状態で病院に連れてこられるケースが少なくありません。

甲状腺機能亢進症は高齢で認められる病気ですので、高齢猫では定期的な健康診断を
行うことが重要です。

 
治療

治療には甲状腺切除(外科)・抗甲状腺薬(内科)治療があります。
甲状腺切除は甲状腺の一部を切除することで、ホルモンの過剰生産を
抑えることを目標として行います。

(すべて切除した場合、逆に甲状腺機能低下症になってしまいます。)
また手術後一定期間、甲状腺の機能が低下する例もあり、その場合は甲状腺ホルモン剤を
補充したりします。

抗甲状腺ホルモン剤はチアマゾール(商品名:メルカゾール)がよく用いられます。
投与量は症例によって調節しなければならないのですが、薬が効きすぎた場合
甲状腺機能低下症の症状や副作用がでてしまうので、低用量から開始して症状・
ホルモンの数値を見ながら、その子にあった用量を決定します。
(副作用としては嘔吐・食欲低下・リンパ球増加・皮膚炎・肝障害・出血傾向など)

獣医師ポイント!
もう一点治療において重要なポイントは腎臓への影響です。
腎不全は高齢猫において多く認められ、甲状腺機能亢進症と併発しているケースも
少なくありません。甲状腺機能亢進症の治療を進めていくと腎不全の症状が
現れることがあります。注意していただきたいのが、これは決して甲状腺機能亢進症の
治療が腎臓に障害を与えているというわけではないという点です。

甲状腺ホルモンには腎臓の血流量を増やす働きがあり,腎臓の働き
(糸球体濾過量)を補うことで、腎臓病を隠してしまっていることがあります。
そのため治療を開始すると、腎血流量が低下し腎不全の顕在化が起ります。

その為、甲状腺機能亢進症の治療においては甲状腺のホルモンだけではなく
腎臓の数値なども気にしながら治療を進めていくことが重要です。