慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病(CKD)とは何らかの原因により腎臓が長期間(3か月以上)にわたって
障害され、その進行に伴い慢性的な腎機能の低下を引き起こす病態を指します。
犬・猫ともに高齢で多く認められ、特に猫では死因の1~3位
(集計元によって差がある)などに入るほど、多く認められる疾患です。
ここでは自宅ケアなどについても解説を行っていきます。

手術難易度
概要

まず多くの飼い主様が混同されているポイントとして
慢性腎臓病とは特定の病気を指すものではありません。

上の見出し部分にも書いたのですが、
慢性腎臓病:何らかの原因により腎臓が長期間にわたって障害されている状態」
を指しており、「何らかの原因」にもともとの病気や原因が入ります。
(「慢性腎不全」という呼び名を使用している先生には、慢性腎臓(病)という呼び方に
違和感があるからという先生もいらっしゃいます。)
その為、毒物の摂取・先天的な腎臓の異常・感染症による腎障害・腎結石など、どんな
原因で あっても腎臓が障害を受け機能低下を引き起こすことで、「慢性腎臓病」と
なります。

その為、慢性腎臓病では腎臓病全体に共通する症状が認められるようになります。
ここからはCKDを理解するうえで重要となる、正常な腎臓の働きについて
解説していきます。

腎臓解剖   腎嚢胞
▲左:腎臓の解剖図 正常な腎臓はソラマメ様のつるんとした外観です
 右:腎嚢胞・腎結石の模型 内部に嚢胞が認められ形態不整があり
   結石が腎臓内に認められ、炎症が起きている様子を示しています。
   病院によく置いてあるこのような模型は、購入したり・(腎臓病の)
   お薬を購入した際の景品なんかで貰えたりします。  

腎臓の役割は大きく4つ


①血液中から老廃物を濾過して尿を生成

 腎臓にはネフロンという構造器官があり、このネフロンが大量に集まることで
 腎機能を担っています。ネフロンの数は動物種によって差があり
 犬では腎臓一つにつき40万個あるのに対し、猫では20万個しかありません。
 (その分、猫は一つ当たりのネフロンの機能が高いです。)
 ネフロンには糸球体と呼ばれる器官があり、この糸球体で血液をこし取り
 老廃物の除去に関与しています。

②体の中の水分量を調節

 腎臓では尿の濃縮を行い、体の中の水分量を調節する働きがあります。
 (喉が渇いていると濃いおしっこがでて、お水をがぶ飲みしていると薄いおしっこが
 出るのはこの働きのためです。)
 猫はもともと砂漠(リビアが原産との説)が原産であり、水分が貴重な生活環境
 であったため、尿濃縮能が非常に高いという特徴を持っています。
 原尿のうち水分の99%が体に再吸収され、体内に戻されるのですが
 ネフロンにある尿細管が主にこの役割を担っています。

③イオンバランスの調整

 Na:ナトリウム,K:カリウム,P:リンなどの交換を行い
 体の中に残すor排泄を行い、体の中のイオン量を調節しています。

④ホルモン分泌

 腎臓はいくつかのホルモン分泌にも関与しており
 レニン:血圧調節
 エリスロポエチン:赤血球産生
 ビタミンD:ビタミンDは腎臓で活性化されて初めて体の中で機能します。
 腸管からのカルシウム・リンなどの吸収を促進させることで調節する働きを持つ。

                         などの働きを持っています。

慢性腎臓病では上記の正常機能が阻害され、様々な症状が現れます。
慢性腎臓病のやっかいな点として、腎機能の75%まで障害を受けて
初めて症状や検査上の異常が現れてくるという問題があります。
その為、飼い主様が症状に気が付き病院に連れてきた時点で、腎機能は残り25%以下
しかない状態です。またもう一つの問題として、この慢性腎臓病は不可逆的である
ことが挙げられます。

一度壊れてしまった腎臓は再生することはないため、基本的な治療としては進行
抑制といった形になります。(人医療でも進行した腎臓病では透析や腎移植が行われ
ますが、これは腎臓が回復する臓器ではないためです)

症状

慢性腎臓病では上で説明した正常な腎機能が損なわれるため、
様々な症状が現れます。

猫 脱水  猫 多飲  猫 貧血
 ▲左:脱水している猫。CKDでは腎臓が尿の濃縮ができず体の水分が喪失します。
  真中:CKDでは水分が失われるため多飲・多尿が認められます。
  左:貧血が認められる猫。口腔粘膜がピンク色ではなく真っ白に変化している。
    重度の腎障害により赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)が産生できず
    貧血を引き起こします。

①老廃物の蓄積:血液から老廃物をこしとる機能が低下し、食欲不振・嘔吐・
          削痩・口内炎などの症状が現れます。
          尿毒症に陥った場合には下痢・神経症状・昏睡などのより
          重度の症状が認められます。

②脱水:腎臓の尿を濃縮する機能が弱まることで、薄いおしっこが出るよう
     になります。(尿比重の低下)体の水分が奪われることで脱水を引き起こ
     し、水分を補うため水をがぶ飲みするようになります。
     その為、多飲・多尿が症状として認められます。

③イオンバランスの異常:高Na血症に伴う高血圧、高P血症になると骨が脆く
               なる・石灰化(カルシウムが沈着すること)による
               腎臓の悪化などが起ります。

④ホルモン異常:ビタミンD不足による骨の異常、エリスロポエチンの分泌障害に
          よる貧血などが症状として現れます。(別名:腎性貧血)
          エリスロポエチンは別名 造血ホルモンと呼ばれ、骨髄に指令を出
          し赤血球産生を刺激します。

その他、原疾患や併発疾患に応じた症状が認められます。