猫ひっかき病(バルトネラ症)

バルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)の感染によって
引き起こされる疾患であり、人への感染を引き起こす
人獣共通感染症の一つです。

猫で通常症状は示さず、むしろ人への影響が懸念される疾患です。

猫ひっかき病の概要

 病原体はB.henselaeという細菌が原因であり、
 グラム陰性・多型性短桿菌です。

猫の赤血球内に寄生するが、猫で発症することはほとんどないと
されています。猫同士の伝播にはネコノミが関与しています。

ネコノミによって吸血されることで、ノミの体内で菌が増殖し
便の中に菌が排泄されます。このノミの糞が猫の爪に付着したり、
毛づくろいによって歯に付着します。

この菌をもつ猫によって引掻かれたり、咬まれたりすることで
猫ひっかき病を人が感染・発症します。

子猫
   ▲猫ひっかき病は日本国内で
    最も多い人獣共通感染症です。
    子猫からの感染が最も多いと報告されています。     


都市部かつ南方ほど高いとされ、日本国内では7.2%の猫が
Bartonella属菌を保菌していたことが報告されています。
また3歳以下の子猫ほど保菌率が高く、成長に伴い免疫機構
によって菌を排除している可能性が推察されています。

また頻度は低いですが人だけでなくノミを介して犬が感染したり、
ノミから人へ感染する可能性もあります。

症状

猫では症状を示すことはほとんど無いのですが、実験的に感染
させた猫では、発熱,一過性の神経機能障害,傾眠,食欲不振
などが報告されています。

人では典型例として猫にひっかかれた傷が数日後に赤く腫れます。
また引掻かれた部位に近いリンパ節の腫脹か認められることも多いです。
腫脹したリンパ節は多くの場合痛みを伴い、体表に近いリンパ節腫張で
皮膚の発赤や熱感を伴うこともあります。

発熱が長く続き、全身倦怠、関節痛、嘔気等も出現しますが
特に治療を行わなくても、自然に治癒することが多いです。
しかし治癒するまでに数週間、場合によっては数ヶ月もかかることがある。

重症例では、脳炎を引き起こす場合が報告されています。
人間では野良猫などと接する機会の多い、子供での発症が多い
注意が必要です。

 
 猫ひっかき病の診断

診断はB. henselae の分離,血清学的診断,DNA診断などがあるの

ですが、猫や犬には臨床症状がないため,発症したヒトを検査する
事例が多いです。

猫ひっかき病を臨床診断する場合,鼠径リンパ肉芽腫,化膿性炎,非定型抗酸菌症
結核,ブルセラ症,野兎病,伝染性単核症,コクシジオマイコーシス,
ヒストプラズマ症,ホジキン病,サルコイドーシス等のリンパ節が腫脹する
他の疾病との類症鑑別が必要があります。

人で疑わしい症状が認められた場合、動物病院では対応できないため
人の病院への受診が必要です。

猫ひっかき病の治療

 猫や犬への効果的な抗菌薬療法は報告されていません。
 基本的に猫では症状が認められず、自然に良化するため
 治療が必要になるケースがほとんどありません。

子猫が成長すると,B. henselae は抗体により自然に排除される傾向に
あるので、感染源としてリスクは小さくなります。

また感染予防としてはノミの駆除猫の爪切りなどが有効です。
子供が家庭にいる場合では子猫との接し方に注意し、ひっかかれないよう
野良猫との接触を避けることも重要です。